不妊症について | 岡山市の産婦人科はくにかたウィメンズクリニック

不妊症について

不妊症とは?

「妊娠を望み、普通の性生活をおくっているのに1年たっても妊娠しない状態」を不妊症といいます。統計的には、普通の性生活を送っている夫婦の約90%が2年以内に妊娠していますので、約10%のご夫婦が不妊症ということになります。

不妊治療とは?

不妊治療は大変特殊な治療で、夫婦がお子さんを望まなければ治療を必要としません。また、ご夫婦のどちらか一方の力だけでは、お子さんを授かることはできません。子どもは、夫婦の間に生まれてきます。お子さんを望み、不妊治療が必要となった場合には、ご夫婦で治療に臨まれるようにしましょう。

不妊治療をはじめる前に

不妊治療というと、体外受精や顕微授精といった高度生殖医療を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。しかし、これまでの診療経験から、約8割の方は一般不妊治療で妊娠されています。 それはきっちりと検査をしたうえで、その人にあった治療を行うことから得られるものです。 そして、きちんと話し合い、ご夫婦が検査や治療を理解し、納得され、治療に臨むことが大切です。
ご夫婦それぞれ、治療の方針は様々です。

※高度生殖医療(体外受精、顕微授精)については、当院では行っておりません。

基礎体温について

基礎体温とは?

朝、目覚めて体を動かす前に婦人体温計を舌にはさんで測った体温が基礎体温です。 女性は、排卵期を境にホルモンの優位性が変わるために、これをはさんで排卵期前が低温相、排卵期後が高温相に分かれます。
この基礎体温表をもとに検査のスケジュールを決めます。

基礎体温表から診ること

①月経周期を確認します。
②排卵期を境にホルモンの優位さが変化するため、低温期、高温期の変化とそれぞれの期間をみます。

基礎体温測定の注意

①基礎体温は、健康のバロメーターです。治療法や診断のための確証となるものではありません。
②体温が上がった、下がった。また高温期だから体温は何度以上、低温期だから何度以下などに囚われることはありません。
③タイミング指導などでは、基礎体温表を使用してわかりやすく説明するための資料として使用することがあります。

不妊症の検査について

不妊検査のスケジュール

クラミジア感染症検査について

クラミジア感染症とは?

目の病気であるトラコーマと同じ種類の微生物が原因で起こる病気です。
セックスによって、腟から子宮内に感染しますが、オーラルセックスでも感染しのどに炎症を発生させます。

症状

約3日~1週間ほどの潜伏期間のあと、粘液状のおりものが増え、下腹痛や不正出血、 まれに右上腹部痛をともなうこともありますが、感染者の約8割は自覚症状がありません。このため、気づかないうちに病気が進行するケースが多いようです。
放置しておくと卵管炎や骨盤内感染症を起こして不妊症や子宮外妊娠につながる可能性があります。また、感染したまま妊娠すると分娩時に新生児に感染して結膜炎や肺炎を起こす危険があります。

検査

腟や子宮などの粘膜内のクラミジアの存在を調べる抗原検査と、クラミジアに反応して血液中にできた抗体を調べる血液検査があります。抗原検査は腟や子宮のおりものを一部を採取して行います。

治療

抗生物質の服用で1~2週間ほどで治ります。仮に口中に感染している場合も同じ薬で治療します。

内診について

内診とは?

医師が、腟に指や器具を入れ、内部の状態を触診によりチェックするものです。腟や子宮の形 、大きさ、硬さなどを確認し、異常がないかを調べます。
最近は、超音波検査で細かいところまでチェックできるようになりましたが、併せて内診を行うことで、さらに正確な診断ができます。
来院の際は、着脱しやすい服装、靴を心がけましょう。

超音波(エコー)検査について

超音波(エコー)検査とは?

超音波を発信する器具(プローブ)を腟内に入れ、子宮や卵巣の画像、卵胞の状態や子宮内膜の厚さなどを調べます。
超音波検査は、月経周期によって検査の内容が変わります。

卵胞期(低温期)で診ること

卵胞の発育状態を確かめます。卵胞とは、中に卵子が入った袋状のもので、卵胞液で満たされています。月経の終わり頃から、毎日、約1ミリずつ大きくなり、直径が約20ミリ前後になったところでLHサージ(黄体化ホルモンの大放出:排卵の引き金になるもの)が起こり、その約36時間後に卵胞から卵子が飛び出します。このため、卵胞の大きさを測り、排卵のタイミング(体外受精の場合は、誘発剤の使用方法や調整、採卵のタイミング)を見極めます。

排卵期で診ること

卵胞の計測と子宮内膜の厚さを計測します。

黄体期(高温期)で診ること

排卵が起こったか、子宮内膜の厚みが増しているかを計測し、確かめます。
通常、排卵すると卵胞からこぼれた水や卵巣からの出血が腹水となって、子宮の裏に溜まるため、これを確認することと、排卵されることなく黄体化してしまう黄体化未破裂卵胞(LUF)が起こっていないかを確認します。

ホルモン(血液)検査について

ホルモン(血液)検査とは?

妊娠にいたるには、ホルモンのバランスが重要になってきます。女性は、排卵を境にホルモンに変化があるため、周期に合わせて血液検査を行います。

卵胞期(低温期)

上昇してくる黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)などを調べます。
FSHは卵胞を育て、LHは排卵を促し、卵胞の黄体化を進めるホルモンです。この2種類のホルモンは、妊娠に深く関わるホルモンで、正常値より低くても、高くても不妊の原因になります。年齢が高くなり、卵巣の機能が低下するとともにFSHは高くなる傾向にあります。

排卵期

上昇してくる黄体化ホルモン(LH)を検査することがあります。
排卵は、LHサージ(黄体化ホルモンの大放出)が引き金になって起こります。LHサージの約36時間後に排卵が起こるため、この数値を測ります。

黄体期(高温期)

妊娠を継続するために必要となる黄体ホルモン(プロゲステロン)、卵胞ホルモン(エストロゲン)の数値を調べます。プロゲステロンが正常値より低い場合、着床障害、流産の原因になると考えられます。
またエストロゲンは、卵胞の成熟、子宮頚管粘液の分泌、子宮内膜の増殖などのさまざまな作用があります。黄体中期には、プロゲステロンとともに高値になるため、これを測定し、プロゲステロンとのバランスをみます。

月経周期に関係なく行うもの

乳腺を発育させ、乳汁分泌を刺激するプロラクチン(PRL)を測定します。妊娠中、授乳中は、この数値が高くなりますが、妊娠していないのに数値が高い場合には、排卵障害を起こすこともあります。
値が異常に高いときには、MRIで脳下垂体に腫瘍がないかを調べます。

子宮卵管造影検査(HSG)について

子宮卵管造影検査(HSG)とは?

腟から細いチューブを入れて造影剤を流し、レントゲン撮影を行い、卵管の通過性や子宮のかたち、腹腔内の癒着の様子などを確認する検査です。
卵管の通りが良くないと多少の痛みを伴うこともありますが、1分程度で終わります。

検査日について

月経終了後2~3日(月経が始まってから10日目)の間に行います。

検査までの流れ

①お電話で 「レントゲン検査の予約」とお申し付けください。
※アレルギー体質の方、以前検査時に体調が悪くなったり痛みがあった方はお知らせください。
②検査当日は基礎体温表とナプキンを1個お持ちになり、外来窓口にお越しください。
③検査2時間前から飲食は控え、トイレを済ませておいてください。
④検査2時間後に腟内のガーゼを必ず抜いてください。

<帰宅後>
検査を受けた当日は、安静にしてください。シャワーはOKです。 抗生剤と鎮痛剤を処方します。抗生剤は3日間服用してください。鎮痛剤は痛みのあるときに服用してください。
茶色のおりものや少量の出血は心配ありません。痛みや熱が続いたり下痢症状のみられる方はご連絡ください。

抗精子抗体検査

抗精子抗体検査とは?

精子は、女性のからだにとって異物です。そのため排卵期以外は、他の雑菌同様、体内に進入できないようにしていますが、排卵期になると腟内の性状が変わり、精子が子宮内へ泳いでいけるようになります。しかし、精子に対して抗体ができてしまうと、排卵期であっても女性の子宮内に精子が進入することはできず、受精が難しい、またはできなくなるため、抗体値を調べます。
この抗体値によって、治療法がかわります。

頚管粘液検査

頚管粘液検査とは?

子宮頚管は、腟と子宮内腔を結んでいます。内面を被う90%は粘液分泌細胞で、この細胞から分泌される頚管粘液は、エストロゲンの作用を受けて、排卵期には精子が通過しやすい性状となります。 そのため、排卵期に十分な量の質のよい頚管粘液が出ているかどうかを排卵日と思われる日の3~4日前から排卵直前に調べます。

精液検査

精液検査とは?

精液中の精子の濃度、運動率、奇形率などを調べる検査です。
精液検査に使用する機器についてはこちらのページをご覧ください。

精液検査を受けられる方へ

①事前にご予約(午前9時30分~午後5時まで)をお取りください。
②診療時間内にお電話でご希望の日時をお伝えください。
③採精後40~50分で結果をご説明します。

採取方法について

①直接容器に採取後、こぼれないようにフタをしっかりしめてください。
②フタのラベルにお名前と採取時間と禁欲期間、をお書きください
③採取後なるべく早く(1時間以内)に持参され、スタッフに容器を渡してください。
④約30分で結果をご説明します。

諸注意

①ご来院時、ご主人の保険証(診察券)を受付でお預りします。
②その日のコンディションで一時的に所見が良くないこともありますので条件を変えて再度検査されることをお勧めします。

一般不妊治療について

タイミング療法について

タイミング療法とは?

超音波検査や尿検査(尿中ホルモン検査)によって排卵日を調べ、タイミングよく夫婦生活(性交渉)を持てるように指導を受ける治療法です。
自然周期で排卵の時期をみていく場合と、生理の4~5日目から排卵誘発剤(飲み薬・注射)を使って排卵の時期をみていく場合があります 。

タイミング療法の方法は?

①生理の13日目頃から超音波で卵胞の発育具合を確認します。卵胞の直径が18mmを超えたら頚管粘液の量チェックと尿中ホルモン検査を行い、排卵の時期を予測します。
②排卵誘発剤を使わずに自然にタイミングを合わせる場合は尿中のLH (黄体化ホルモン)を検出する排卵検出キットを使い、LHサージ(排卵直前のホルモンの上昇)を確認し、タイミングを合わせます。
③hCGの注射を打って人工的にLHサージを起こすと、タイミングが合わせやすくなります。
④黄体機能不全(妊娠と関わりの深い黄体ホルモンの分泌が不足する症状)が疑われる方は、排卵誘発剤や着床を補助する薬を使うことで妊娠しやすい体をつくっていきます。

治療はどのくらい続けるの?

6ヶ月が目安になります。6ヶ月つづけても妊娠しない場合はステップアップ(人工授精)を考えましょう。

妊娠判定

基礎体温の高温期が3週間以上つづいたら妊娠の可能性があります。
尿検査(妊娠判定)を行い、超音波で子宮内に胎嚢が確認できれば妊娠判定となります。

人工授精(AIH)について

人工授精(AIH)とは?

排卵にあわせてご主人に採精していただき、精液中の精子を洗浄・濃縮して子宮の中へ直接入れてあげるだけの簡単な治療法です。一般不妊治療の中では妊娠率の高い治療法として普及しています。

適応する方

①性交障害
②精子の数が少ない(運動率が低い)
③抗精子抗体陽性
④タイミング療法では妊娠しない
⑤頚管粘液が少ない
⑥原因不明不妊
※卵管がきちんと通っていることが条件です。

妊娠率

受精が行われる卵管膨大部に効率よく元気な精子を送りこんであげることで、卵に到達する精子の数が増え、妊娠率がアップします。心身への負担も少なく、毎周期おこなえます。妊娠率は10~15%程度です。

費用

3割負担で5,460円(別途診察料・精液検査費・薬剤費が必要となります)
※排卵誘発剤や着床補助の薬を使う場合がございますが、その費用は含まれていません。

人工授精のスケジュール

「自然周期」か「排卵誘発周期」かによって多少異なります。

■自然周期の場合
月経の13日目前後に超音波で卵胞の大きさをチェックします。

■排卵誘発周期の場合
飲み薬を使う方法:
月経の5日目から5~7日間、卵を育てる薬を服用して卵の発育を促します。
注射を使う方法:
月経の4~5日目からhMG製剤を隔日(毎日)4~6回程度注射することで卵胞の発育を促します。
副作用:
飲み薬ではまれに子宮内膜が薄くなったり、頚管粘液が減ってしまうことがあります。その他、多胎、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用が出ることがあります。

■診察
自然周期および排卵誘発周期ともに、卵胞経が約20mmに達したところでhCGの注射(排卵を促す目的)をして、翌日AIHを行います。

■精液採取
来院直前に容器に採取して持参されるか、来院後、採精してください(受付時間:9時30分~17時、木曜日は11時30分まで)。採精される2~3日前は禁欲しておいてください。

■精子調整
採取した精液の洗浄・濃縮をします。1時間程度かかります。

■AIH
内診室もしくは手術室で行います。
子宮内に細く柔らかいチューブを挿入し、調整した精子を注入します。子宮の角度によっては少し痛みを感じることがありますが、チューブがスムーズに入れば痛みはほとんどなく、数分で終わります。

■AIHを受けた後
着床補助のためhCG注射をします。5分程度、安静にして様子をみたら帰宅して結構です。まれに軽い腹痛や少量の出血、茶色のおりものがみられることもありますが心配いりません。抗生剤を2日分処方しますので忘れずに服用してください。当日からシャワーは可能です。

■着床補助
飲み薬(デュファストン)か注射で着床補助を行います。
注射の場合は3回ほどの通院が必要です。

■妊娠判定
AIH後3週間以上月経がなければ妊娠判定を行います。